ある先生から、「授業のUD化はどうしているのか?」というご質問を頂きました。
「ん~。何か特別なことはしていないような気がするんだけど…。」というのが直感です。
しかし、授業を参観された先生方や『学び合い』のようすをお話しした先生方は、「どうやって生徒のやる気を高めるんですか?」「どうしたら全員が課題を克服するのですか?」などご質問を頂きます。
私が実践していることのベースは、『学び合い』(上越教育大学 西川純先生提唱)です。
『学び合い』のベースは、「教室全員が課題を克服するためには、さまざまな生徒間での関わりが必要で、教師はその環境づくりに徹する」と言うことだと思います。
つまり、「授業のUD化のフィールドを教師が生徒に与え、生徒によってUD化されて行っている」そんな感じがします。
授業中に、「誰と関わるか」「どんな方法で学習するか(教えるか)」「何を使うか」などは、生徒たちが臨機応変に対応します。もちろん、はじめからはできません。しかし、相手を理解して、できるようになります。
<授業のUD化の14の視点(関西学院初等部副校長 村田 辰明先生)を、誰がしているのか整理してみます>
・クラス内の理解促進
→はじめは教師、次第に生徒同士の主体的な関わり合いが理解を深めます。
・ルールの明確化
→はじめは教師(『学び合い』のルール)、しかし、生徒間でルールというよりマナーが成立します。
・刺激量の調整
→教室の掲示物は、生徒に任せています。(前面黒板はなるべくすっきりさせています)
・場の構造化
→固定式の棚などある程度は固定化されますが、授業中の机や椅子の位置は生徒に任せています。
・時間の構造化
→『学び合い』タイマーをTVで流しています。
・焦点化
→つまずきは生徒それぞれ、どこを焦点化するかは、生徒に任せます。
・展開の構造化
→授業の流れは、「教師による課題の説明(10分)」→「フリートーク(30分)」→「振り返り(10分)」を守るようにしています。
・スモールステップ化
→学習プリントは段階を踏んで作っていますが、どの順番でやるか、どこにどれだけ時間をかけるかは、生徒が自己管理します。
・視覚化
→時間はタイマー、課題の進行状況は「ネームプレート」。そのほか、ホワイトボードなどは自由に使えます。
・身体性の活用
→立ち歩くこともできるので、全身を使って説明したり、人をモデルにしてシミュレーションすることも可能。
・共有化
→授業の半分以上、仲間と関わることができ、質問したり、説明したりできます。
・スパイラル化
→個人ベースで授業が進むので、わからないところは、自由に振り返ることができます。
・適用化
→生徒は授業中にさまざまなことを習得します。学習面では、「今日の内容は、前に学習した○○がヒント」などと伝えることで意図的に活用させることも可能です。
・機能化
→学習内容はどこまで日常生活に転用させることができているかわかりませんが、「仲間の大切さ」や「仲間づくりの方法」については、日常生活の委員活動や係活動、学校行事で活かせていると思います。
今までの授業を振り返りましたが、やはりベースになるのは「仲間と関わることこそ、大人になるために絶対に必要である」ということと「不愉快な気持ちになる人を一人も出さない」「全員が今日も、明日も、10年後も、30年後も幸せであるために、今できることを精一杯行う」という共通認識だと思います。
これが、授業だけでなく教室の「UD化」だと思います。
私の教室には、特別支援教室在籍の生徒も、別課題をもって一緒に授業を受けています。そのほかにも、さまざまな授業でのバリアを感じるであろう生徒も在籍しています。「何をどうするかを教師が考えることはもちろんですが、生徒同士が実際に関わり合い、失敗もしながら、どうすれば、『全員にとって』ベストかを考え、実行していくことも、教室のUD化で重要なのかもしれません。今の授業では、生徒からの多くの要望からいろいろなことが変更されたり、決まったりしています。
見た目の部分だけで整理すると、
・『学び合い』タイマーによる時間の可視化
・「ネームプレート」による学習状況の可視化
・生徒人数+αの数の机と椅子
・学級文庫に国語辞書、地図帳、理科便覧
・B4サイズのホワイトボード6枚
・授業中に自由に使える前面黒板